時間は人間発達の場

 

 「命とは自分が使える時間。その時間を少しでも自分以外の人のために」と語り日野原重明さんが一〇五歳で亡くなられた。

 いま、わが国では、家庭と職場、都市と農村、国と地域など私たちの生活するあらゆる場面で、人間と労働の尊厳が踏みにじられ、目を覆うばかりの異常が連発している。大手広告会社「電通」をめぐる違法残業事件が問題になっているさなかに、「残業代ゼロ法案」など、むき出しの利益優先な国策が暮らしに襲いかかる。

 七月二一日には「新国立(競技場)建設現場で働く新入社員自殺、 厚生労働省が実態調査へ」のニュースが伝えられる。建設業が時間外労働の上限規制の例外になっていることで塩崎厚労大臣は「建設業は時間外労働が青天井の世界だ」と語る。

 「近代産業の全歴史がしめしているように、資本は、もしそれをおさえるものがなければ、むちゃくちゃに情容赦もなくふるまって、全労働者階級をこの極度の退廃状態におとしいれることをやるであろう」と述べたマルクスの国際労働者協会中央評議会での講演は一八六五年だった。  

 それは一五二年前、わが国が安政の大獄の頃のこと。そして今、バブル崩壊から二六年を経過した日本社会では、「人間発達の場」である筈の時間が「人間絶望の空間」となって、多くの青年の行く手に立ちはだかっている。(こ)

 

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